あれから何年立っただろうか。 俺は紆余曲折を経て魔剣ダグザルムを手に入れていた。 「団長殿! 儀式が始まります!」 ついに始まるか、魔王の儀式が。 俺は魔剣を扱う力を認められて魔王軍団長をやっていた。 今日は魔王がさらなる国力増強のため、とある儀式をやるという。 その準備のために我々魔王軍団も日々頑張ってきた。 皆、先の見えない作業に疲れ果てたが、 AVと呼ばれる少女と動物が映ったビデオを見ると癒され、また頑張れた。 「皆、よく頑張ってくれた。ついにこの日が来たのだ!」 魔王シュロトリアが演説を行っている。 集まった民衆や軍団も大盛り上がりだ。 そしてついに儀式が開始され、あたりは静まり返った。 「ささやけ! いのれ! えいしょう!」 魔王の声が辺りに響く。 「ねんじろ!!」 さらに続けてひときわ大きな声を魔王が上げた。 その場にいる全員が一斉に念じる。 「復活したまえー! 我が国に伝わる祝福の魔王神よー!!」 魔王がそう言った瞬間、轟音が鳴り響き地面が大きく揺れ、衝撃で地面に大きな穴が開いた。 その穴から、何者かが出て来る。 そしてその者の姿が目に入った。 このオーラ……国に伝わる魔王神なんかじゃないぞ……!? それに気づいてるのか魔王は警戒心をむき出しにしている。 「貴様……何者だ?」 「我が名はスーリライ。全てを無に返すものなり」 得体の知れない者は魔王の問いに対しスーリライと名乗った。 そして手を魔王の方へ向ける。 瞬間、スーリライの手から魔王の方へ光線が走る。間一髪魔王は避けた。 その光線は魔王の横をすり抜け、遥か遠くへ飛んでいく。 そして赤い光が辺りに走った。 見ると、遥か向こうの山が燃えている。 「皆逃げろー!!」 魔王が叫び、そしてスーリライへと飛びかかった。 スーリライは飛び上がり、それを魔王も追いかけて飛んでいく。 「聞こえたな! 全員退避だ! 一旦砦に行くぞ!」 俺は部下に退避指示を送り、民衆たちを誘導していく。 その間にも上空では激しい音が鳴り響いていた。 魔王とスーリライが戦っているのだろう。 大方民衆の避難は完了した。 上空の音は徐々に静かになってきている。 意外に早かったな。 流石歴代でも屈指の力を持つ魔王シュロトリア。 被害拡大を防ぐため避難したが、その必要は―― 「!?」 上空に目を向けた時に見えたのは、オーラをさらに増幅させているスーリライと、 疲弊して息が上がっている魔王の姿だった。 「副団長を呼べ」 俺は部下に言う。 「俺ならここだ」 部下が答えるよりも先にその声は答えた。 現れたそいつは頬に大きな傷を持った男。 昔からの友であり最大のライバル。 「まさか魔王が押されてるとはな。あのスーリライってやつタダもんじゃねえ」 「魔王を失ってはこの国の終わりだ。今まで恩義を返す時だぞ」 そう言いながら俺は魔剣を抜く。 「魔剣ダグザルムか。俺を選ばなかったその剣の力、見せてもらおうか」 友も剣を抜く。 2人は魔王の居る方向へと向きを変え構えた。 「魔王親衛隊にも連絡を! この一戦、国を掛けた戦いになる」 俺は部下にそう言い残し地を蹴った。 友もほぼ同時に地を蹴る。 2人は勢いよく飛び上がり、そのまま魔王のいる場所に向かって飛んでいった