主人公:三枝祐介 ヒロイン:東城紗理奈  ←一応、イメージに合わないなら変更可 ※ひとまず文量を確認するために文だけ書く ←後でラベルなど挿入? ※同様の理由より、選択肢は一旦排除して、ある一つの一本道で書く ★序文(リード文) 「僕は彼女のことが好きなのか?」 その疑問は、今はまだ解決しないだろう。 理由は簡単で、とても単純。 きっと「彼女が僕を好きだから」だ。 彼女が僕を好きである限り、僕は彼女の本心を知れない。 彼女が僕を好きである限り、彼女は「僕」を見てはくれない。 「愛する」とか「好き」とか、言葉ではそう言ってる。 でも、分かっているんだ。 その言葉に込められた意味は、言葉通りじゃないってこと。 ……多分、僕は彼女に少しずつ惹かれ始めているんだ。 けど、それが分かっているからこそ、疑問に答えが出せない。 今の彼女は、本当の、言うなれば「一人の彼女」じゃない。 だから、いつか「一人の彼女」と接した時…… 僕はそれでも、彼女に惹かれるのだろうか? そして、彼女は……まだ僕を「好き」だと、言葉通りの意味で思ってくれるだろうか? そんなもの、分からないんだ。 だから僕には、答えが出せない。 ――事の始まりは、一カ月前。いや、彼女からすればもっと以前からだったかもしれない。 ★一カ月前の回想(ここで祐介と紗理奈がくっつく?) ○月×日 吸い込まれてしまいそうなほど青く、高く、澄み渡った快晴の空。 僕――三枝祐介――はいつものように、その青の下をせっせこ自転車を漕いで高校に辿り着いた。 昇降口に入り、あくびをしながら靴を履き替えていると、一人の女子が近くに現れた。 僕は柄にもなく、寝惚け眼のまま挨拶をした。 【三枝祐介】※以下【祐介】 「おはよう」 【東城紗理奈】※以下【紗理奈】 「おはよう。三枝君」 彼女――東城紗理奈――と僕の関係は、ただのクラスメート。 それ以外に特別な関係などなく、まあ、別にそれでいい。 けれど、興味がないわけじゃない。僕だって男だ。 東城さんは正直に言って、かなりの美人。 街で見かければ、男子ならば必ず振り返るだろう。 聞く所によると、芸能事務所から声を掛けられたこともあるらしい。 そんな東城さんは、見た目だけじゃない。 僕のクラスの学級委員長で、成績は常に校内でトップテンに入っている。 その上、スポーツも苦手じゃないらしい。 証拠に、バレーボール大会で僕は彼女のアタックに吹き飛ばされた。 【紗理奈】 「……どうしたの? じっとして」 【祐介】 「いや、僕も東城さんみたいになんでもできる人になれればなあ……と思って」 間違ってはいない。 彼女のことについて考えていた、という点においては。 【紗理奈】 「変なことを言うのね。でも、私にだってできないことはあるの」 【祐介】 「へえ、想像できないな。どんなこと?」 【紗理奈】 「相手の心を読むこと。……例えば、三枝君の心、とか」 冗談で言っているんだろうけど、妙に真剣なトーン。 【祐介】 「できないこと、じゃないよ、そんなの。超能力じゃん」 【紗理奈】 「少しでいいから、気持ちを知りたい。そういう相手の一人くらい、君にだっているでしょ?」 いたずらっぽく笑って、東城さんは僕の顔を覗き込む。 からかわれているのは分かっていても、なんだろう、嬉しい。 そもそも、これまでも挨拶と学校でのちょっとした仕事以外では接点がなかった。 それだけなのに、こんな風に「からかってくれる」程度に心を許してくれていたとは。 いや、僕の「女性に翻弄されたい願望」は別として……。 【祐介】 「……今の東城さんの気持ちが知りたい気分だよ」 【紗理奈】 「お・し・え・な・い」 一文字一文字区切って、楽しげに東城さんは言う。 そう、彼女は優等生で綺麗で、でも、クールってわけじゃない。 時に気さくで可愛い。そういうところに惹かれる男子も多いと聞く。 計算だとしても、このギャップにはやられるよな。 【紗理奈】 「あ、三枝君が教えてくれるって言うなら、私も教えてもいいかも」 また、からかうような笑顔。 そんな彼女と共に、僕は上履きをペタペタと鳴らして廊下を歩き出す。 【祐介】 「今の気持ちか……眠い?」 わざとらしくあくびをして見せる。 が、東城さんは不機嫌そうに首を振った。 【紗理奈】 「……私の知りたい気持ちじゃないから、意味ないよ」 【祐介】 「じゃあ、何が知りたいんだ?  仮に今、僕の気持ちを読んだとしたらそうなるんだから仕方ない」 僕の問いに、彼女は首を傾げて少し考える素振りを見せた。 数秒後、ゆっくりと口を開く。 【紗理奈】 「一番知りたいのは……弱味、かなあ?」 噛み締めるように恐ろしいことを言うな! とは、ツッコめるはずもなく、僕は驚いた風に目を見開いた。 【祐介】 「よ、弱味? それはちょっと穏やかじゃないな  ていうか、そんなもの知ってどうするの?」 【紗理奈】 「どうするって、あんなことやこんなことをするの」 【祐介】 「冗談?」 【紗理奈】 「本当に心が読めたら、冗談とは言えなくなるかもね」 それは、「冗談だ」と取っていいのか。 【祐介】 「まあ……僕だって、そんな能力があればそういう使い方もしちゃうか。  ああ、でも、東城さんには弱味とかなさそうだし……」 【紗理奈】 「じゃあ、三枝君、私が知られたくないことってなんだと思う?  その、具体的に、さ」 【祐介】 「ええと、なんだろ?」 東城さんが他人に知られたくないこと? しかも、具体的に? いや、当てても当てなくても、どうせ教えちゃくれないだろうけど。 勉強、運動、見た目、全て秀逸。 なら、それに関する悩みではないはず。 だったら、もっと、別な、そう、彼女だけではどうにもならないこと? つまり、相手がいるんだから、一般的なことで言えば…… 【祐介】 「ありきたりだけど、好きな人、とか?」 【紗理奈】 「大正解」 上履きの靴音を高く鳴らしてクルリと僕の方を振り向き、東城さんはピッと人差指を立てる。 彼女が足を止めたのにつられて、僕も足を止める。 ……って、いや、今、「大正解」って言ったか? マジで? 当たっちゃったの? 「好きな人」が、東城さんの知られたくないこと? あの、こう言っちゃなんだけど、東城さんは逆に選べる立場だろうに。 言い寄ってくる男子はいくらでもいるはずだ。 優等生ってこともあって、若干言い寄り辛くはあるけど それでも、総告白され回数は二桁は堅い。 ……あれか、よくドラマとかである、アレ。 「本当に好きな人からはアプローチされない」的な展開か。 だとしたら、そいつはなんて罪な男子なんだ。 我が高校の男子共の怨念を一身に受けて爆死するがいい。 まあ、僕には関係のないことだ。 ただ、東城さんに「好きな人」がいるってのは意外。 そういう噂、全然なかったし。 【祐介】 「あの、正解、とか言っちゃってよかったの?」 【紗理奈】 「当てられちゃったんだもん、出題者として嘘は吐けない。  ……意外って顔してる」 フフッと笑って、東城さんは再び歩き出した。。 【祐介】 「あ、ちなみに、誰?  ……とか、教えてくれないよね、さすがに、ハハ」 どうしても気になって、我慢できなくて、聞いてしまった。 うん、答えてくれるわけないって分かってるんだけどさ。 分かってるから、こうして苦笑いでお茶を濁しているんだ。 それに―― 彼女の顔が、一瞬だけ、強張ったんだ。 見開かれているようにも見えた、笑っていない目。 僕を見詰めていたそれは、まるで僕を糾弾しているかのようだった。 【紗理奈】 「……知りたいなら、教えてあげなくもないよ?」 からかうようでもなく、嘘のようでもない。 静かで、落ち着いた、真摯な言葉。 僕はなぜだか、心臓がキュッと冷たく縮み上がるのを感じた。 意外な返答だったから? さっきの目を思い出したから? ……いや、多分これは東城さんの秘密を知れるってことに対する、一種の快感。 僕だけが知れる優越感と、好奇心と期待心。 でも、さっきの目を思い出して、知ることに少しの恐怖も覚えている。 けど、それゆえ、彼女の誰にも侵せない「禁忌」に触れられるようで。 ――変態かよ、僕。 【祐介】 「教えてくれるって言うなら、知りたいな。  なんせ、他でもない校内一の美少女、東城さんの秘密なんだから」 【紗理奈】 「じゃあ、取り引きしない?  知りたいって言った以上、キミに拒否権はないんだけどね」 東城さんは階段を一段一段確かめるように上りながら、後ろの僕に言った。 【紗理奈】 「放課後、教室に残ってて。  ちょっと学級委員の仕事を手伝って欲しいから」 【祐介】 「それが、取り引き?」 拍子抜け。 僕が聞こうとしてるのは、東城さんの「知られたくないこと」。 言い換えれば、「誰にも知られないよう隠してきたこと」。 だったら、「学級委員の仕事」程度じゃ釣り合わない。 【紗理奈】 「うん。簡単な仕事だけ」 僕の気持ちを知ってか知らずか、彼女はそう楽しげにうなずいた。 ■場面転換(一気に放課後へ?)←これ以前にも場面挿入可 放課後。 朱く儚げな西日が差し込む、がらんとした教室。 歩く度に上履きの音が響き渡り、なんとも言えない寂寥感が空間を包んでいく。 外から聞こえてくるのは、部活に精を出している生徒達の声。 それを聞いていると、まるで外とは隔絶された世界にいるかのような錯覚に陥る。 そんな、見慣れているのに、どこか違った、よくある放課後。 【紗理奈】 「今、帰れば、取り引きを放棄できるけど、いいの?」 そう言って僕の前に現れた東城さんは、夕日に照らされて幻想的に見えた。 開けられた窓から入ってくる風に、彼女の髪がしなやかに揺れる。 普段はチラリとしか見られないきめ細かな白い肌は、陶器のように美しい。 そして、じっと僕を見詰めてくる大きな瞳は、朱の光を受けて宝石のようだった。 この時の僕は、彼女に見惚れていた、と言って過言じゃない。 ふと、彼女が首を傾げた。 ずっと見ていたのを不審がられたみたいだ。 「見惚れていた」なんて、これから「好きな人」を聞く人に言えない。 そうでなくとも、言えるはずない。 その、とりあえず、ええと……。 【祐介】 「ああ、と、取り引きの放棄?  あのさ、拒否権ないって言ってたし、それに、たかが学級委員の仕事だろ」 と、そこまで言って、違和感。 たかが学級委員の仕事で、ここまで念を押すか? そうだよ、これは東城さんの秘密と引き換えなんだぞ。 それに相当する何か、と考えるべきじゃないのか? 【祐介】 「……いや、ちょっと待て、そこまで念を押すって、どんな仕事?」 ★フォーカスする一日(あるきっかけで異常性に気付く→振るOR続ける?→結果)