主人公:三枝 祐介(さえぐさ ゆうすけ) ヒロイン:東城 紗理奈(とうじょう さりな) ←流用 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ☆プロローグ(一カ月前の回想をちろっとやってから、事が起こる一日へフォーカス?) 彼女は笑っていた。 どうしようもないくらい、屈託のない笑顔で。 誰にも見せない、無邪気な少女のような笑顔で。 それは、僕だけに向けられた、僕だけが知っている、彼女の「本質」だった。 ――事の始まりは、一カ月前。いや、彼女からすればもっと以前からだっただろう。 ○月×日 吸い込まれてしまいそうなほど青く、高く、澄み渡った快晴の空。 僕――三枝祐介――はいつものように、その青の下をせっせこ自転車を漕いで高校に辿り着いた。 昇降口に入り、あくびをしながら靴を履き替えていると、一人の女子が近くに現れた。 僕は柄にもなく、寝惚け眼のまま挨拶をした。 【三枝祐介】※以下【祐介】 「おはよう」 【東城紗理奈】※以下【紗理奈】 「おはよう。三枝君」 彼女――東城紗理奈――と僕の関係は、ただのクラスメート。 それ以外に特別な関係などなく、まあ、別にそれでいい。 けれど、興味がないわけじゃない。僕だって男だ。 東城さんは正直に言って、かなりの美人。 街で見かければ、男子ならば必ず振り返るだろう。 聞く所によると、芸能事務所から声を掛けられたこともあるらしい。 そんな東城さんは、見た目だけじゃない。 このクラスの学級委員長で、成績は常に校内でトップテンに入っている。 その上、スポーツも苦手じゃないらしい。 証拠に、バレーボール大会で僕は彼女のアタックに吹き飛ばされた。 【紗理奈】 「……どうしたの? じっとして」 【祐介】 「いや、僕も東城さんみたいになんでもできる人になれればなあ……と思って」 間違ってはいない。 彼女のことについて考えていた、という点においては。 【紗理奈】 「変なことを言うのね。でも、私にだってできないことはあるの」 【祐介】 「へえ、想像できないな。どんなこと?」 【紗理奈】 「相手の心を読むこと。……例えば、三枝君の心、とか」 冗談で言っているんだろうけど、妙に真剣なトーン。 【祐介】 「できないこと、じゃないよ、そんなの。超能力じゃん」 【紗理奈】 「少しでいいから、気持ちを知りたい。そういう相手の一人くらい、君にだっているでしょ?」 いたずらっぽく笑って、東城さんは僕の顔を覗き込む。 からかわれているのは分かっていても、なんだろう、嬉しい。 そもそも、これまでも挨拶と学校でのちょっとした仕事以外では接点がなかった。 それだけなのに、こんな風に「からかってくれる」程度に心を許してくれていたとは。 いや、僕の「女性に翻弄されたい願望」は別として……。 【祐介】 「……今の東城さんの気持ちが知りたい気分だよ」 【紗理奈】 「お・し・え・な・い」 一文字一文字区切って、楽しげに東城さんは言う。 そう、彼女は優等生で綺麗で、でも、クールってわけじゃない。 時に気さくで可愛い。そういうところに惹かれる男子も多いと聞く。 計算だとしても、このギャップにはやられるよな。 【紗理奈】 「あ、三枝君が教えてくれるって言うなら、私も教えてもいいかも」 ☆ヤンデレ部分 ※主人公がフったルートかな?(進める内に変化する可能性大なので、適当) 何が起こったのか分からない。 そう、思い出そう。 僕の、記憶の欠落した部分を。 睡眠から、覚めて、それで……それで? いや、それは思い出そうとしてもしょうがない。 今は現状を整理しよう。 僕は、東城さんの家で、目を覚ましたんだ。 僕の側には、彼女の背中。 【紗理奈】 「私は君がいればいい。君がいなくちゃ、私の存在に意味なんてない」 ぽつり、東城さんは誰に言うでもなく言った。 ――戦慄。 違う。おかしい。おかしいのは、分かっていた。 けど、なんだ? この違和感は? ……どうして、僕に向かって言わないんだ? 違う、違う、違う、違う! 僕じゃない。言葉からはそう取れるけど、僕じゃないんだ。 彼女がこうなった原因は、僕じゃない。 じゃあ、誰だ? さっきの言葉の意味は? 【祐介】 「東城さん……」 そう声を発すると、東城さんは僕の方を振り向いた。 彼女は僕を見下ろして、微笑む。 その笑顔は、壊れていた。 【紗理奈】 「ねえ、三枝君、君のためならなんだってする。 それが最高の喜びだし、それでやっと私は成立する。 だから、一人にしないで」 【祐介】 「……無理だよ。もう」 冷静だった。自分でも考えられないほど。 そして、その冷静な頭で僕は理解する。 彼女が求めていたのは、彼女自身なのだ、と。 僕という媒介を通して、彼女は自身を理解していた。 逆に言えば、そうすることでしか彼女は自分を愛せない。 アイデンティティ、なんてレベルの問題じゃない。 いつからそうなったのか? どうして僕なのか? 尋ねたいことはいくらでも湧いて出てくるが、とても尋ねられない。 なぜなら、彼女が、泣いていたからだ。