タイトル「ドメスティック・レボリューション・ゼロ」 序章 〜オレは間違った選択をしたのか〜 閉鎖的な田舎暮らしに嫌気が差し、実家を飛び出して10年余りが過ぎた。 その間に得たジョブスキルは、家出ネコの捜索やヒト探し。 あと浮気調査も得意になったな。 最近では目を見ただけで浮気してるか否かは分かってしまう。 人物観察に関してはかなりのものだと自負している。 ああそうだ。 察しの通り、オレは興信所でバイトをしている。 正社員じゃないバイトだ。28歳になってまだバイトだ。 噂によると受付の24歳派遣社員の清水嬢より薄給らしい。 これは少し堪えた。 このままで良いのかと思わなくもないが、今更田舎で家業を継ぐのはごめんだ。 というかオレはいまひとつ実家の家業を知らない。 親父は偉そうにしていたが、実質ニートみたいなものだった。 一応修行とやらで毎日鍛えられたが、Z戦士じゃないんだから身体を鍛えたところで宇宙人が攻めてくるわけでもない。 つまり無駄な努力だ。 そんなわけで、オレは18になったと同時に家を出た。 だがどういうわけかオレの居所を突き止めた父親から一通の手紙が届いた。 余り見たくはなかったが、鬼気迫る宛名に呪詛めいたものを感じたので、オレは開封し読まざるをえなかった。 多分破り捨てていたら文字通り呪われていただろう。 嘘だろうと思うだろうが本当の話だ。 つまりオレの家計は代々そういう特殊な力を持っている。 オレはなんというか才能が無いらしく、せいぜい気脈をあやつり相手の血行を悪化させたり良くしたり、整体師まがいの能力があるにすぎない。 もうひとつ能力はあるが、それはいわゆるマジックポイントが足りません状態で、オレの手に余る代物で、一度使ったら死にかけたので、二度と使うまいと封印している。 話を戻そう。 実家からの手紙には、そろそろ式の段取りを決めるので戻って来いというものだった。 式とはなんだとクビを捻ったが、どうやらオレと誰かが結婚するらしい。 オレが結婚? 誰と? というか許婚だと! 確かに子供頃に許婚が居るみたいなことを聞いた記憶はある。 だがもう時効だろう。オレに許婚がいたとしても、相手ももういい歳だろう。 まさかオレを帰郷を信じて待ってるとか? 嘘だろ。田舎は嫁不足だから村の誰かと結婚すればいいだろ! あれか、ちょっと容姿や性格に問題があったりするのか。こういう人って意外と地元の名士の娘だったりするから嫁がせないわけにはいかないから、外でブラブラしてるオレなら騙せるだろうと思ったわけじゃあるまいな? 親父たちの魂胆が読めたぜ。こんな婚約破棄だ破棄! 三行半突きつけてやる! オレは怒りに我を忘れ、大人たちの汚い陰謀渦巻く村社会へと再び戻ることになった。          To be continued