キャラ小説的味付けA ・純情ツンデレ少年×小悪魔姉ちゃん  ――一まぁい……二まぁい……。  底の知れない井戸から聞こえてくるのは、恨みがましい女の声だった。  ――三まぁい……四まぁい……。  やめてくれ……。そういうベタだけどとにかく音と雰囲気で怖がらせてくる系は一番苦手なんだよ。  ――あれ、どこまで数えたっけ? まいっか。一まぁい……二まぁい……。  戻ってるし……。  ――六まぁい……。おい、今何刻でぇ? へえ、二つで。三まぁい……。 「混ざってんだよ!!」  俺はフトンをはね除ける。 「あ、ヒキオ起きた?」 「ああ、枚数がループし始めた辺りからな……」  というか俺にこんなことをするのは一人しかいない。俺の枕元で満面の笑みを浮かべるのは、やはり姉ちゃんだった。 「鍵閉めといたのに……」  というより、高校生にして引きこもりでもある俺の部屋の鍵は基本的に閉まっている。突然の闖入者は都会の真空地帯で起きた現代のホラー…… 「だってほら、窓の鍵は空いてるし」  などではなく、まあそういうことだ。隣に住むこの変人ときたら、昔から何かと俺にかまいたがるせいで、窓にハシゴを架けてまで部屋に侵入してきやがる。 「姉ちゃんが開けとかないと怒るからだろ……」  大学に入って少しは落ち着くかと思えば、そんなことも全くなかったわけで。彼氏でも作ればいいのに。 「なんつって、ほんとは嬉しいくせにー」  ぐいっと顔を近づけてくる姉ちゃん。俺は慌てて視線を逸らす。無駄に造作が整い過ぎてるせいで、俺はいつまで経っても慣れることができない。 「照れるヒキオが可愛いから、つい来ちゃうんだよね」  ぐっ……。 「まあ、でも実は今日はね、ちゃんと用事があるんだよ。うちのゼミで、都市伝説をテーマにフィールドワークやることになってさあ……」 キャラ小説的味付けB ・やれやれ系切れ者少年×天然ボケお姉ちゃん  ――ヒキオー。ヒキオー!!  母さんの声がヘッドセットの無線通信に重なる。今いいところなのに。どうせ晩ご飯か何かだろう。 「カバーミー!! ゴーゴーゴー!!」  僕はチームのメンバーに突撃支援の指示を出す。これで勝てばうちのクランの勝利だ。  別に心配しなくても高卒認定を取って大学には入るし、すでに模試では国立大学のA判定ももらっている。僕には高校に行く必要がないのだ。そこら辺の引きこもりと一緒にしてもらっては困る。 「ヒキオ!! ヒキオったら!!」  階段の騒がしい足音が近くなり、ついには部屋のドアが開く。ただの引きこもりとは一線を画す僕の部屋には、鍵など付いていないのだ。 「ご飯だったら廊下に置いといて!!」  僕は母さんの方を見もせず、PCの画面に集中した。  そして味方が敵と打ち合い、敵チームの残りが一人となり、――画面が真っ暗になった。僕はヘッドセットをうち捨てた。 「アオオーッ!! サノバビィーッチ!!」 「ひっ!? あっ、私……なんか踏んだかも」  !? 聞き慣れない声に振り返ると、そこにいたのは母さんではなかった。 「お姉ちゃん……」 「ごめんヒキオくん。なんか、パソコンの線? 抜けちゃったみたい」  近所に住むお姉ちゃんは、扇風機(・・・)のプラグを持って右往左往する。あのさぁ……。  PCモニタの電源コードを繋ぎ直し、復帰させた画面にはズタズタにされた金髪の雑魚、もとい僕がいた。 「はぁ……。で、僕になんか用なの?」  ネットゲームからログアウトし、僕は正座したお姉ちゃんと向かい合う。 「忙しいのにごめんね。ちょっとお願いがあって……」  とか言いながら、母さんの用意したクッキーをパクパク食べている。ほんと、甘い物が大好きなとこも変わってないな。  お姉ちゃんは、小学校時代に同じ通学路で登下校していた頃からの知り合いだ。  僕より二歳も年上で背も高いくせに、突拍子もないことをしては僕を頼るお姉ちゃんは、僕が引きこもっても、女子大に入学して学校が分かれても相変わらずだった。  最近では引きこもった僕に何か義務感めいたものを感じているらしく、暇さえあれば一緒に学校に行こうと門を叩くのだ。  でも自分が大学に行くタイミングで誘うもんだから、僕はいつもフレックス登校することになり、こっぴどく怒られることになる。 「お願いって? 学校に行けってんならお断りだけど」 「えっと、今日はそうじゃなくて――あ、ヒキオくんもジュース飲む? はい」 「あー……いいや。喉、乾いてないから」  母さんは何を勘違いしているのか、大きなグラスに注がれたジュースにはハート型のストローが二本刺さっている。でも、僕とお姉ちゃんは断じてそんな関係ではない。  お姉ちゃんの外見は結構……いや、かなり……正直なところ、そこら辺のアイドルにも負けないほど可愛いのだけど、僕のパートナーとしては若干頭脳に不安を覚えるというか……。 「実はうちのゼミで、都市伝説っていうか怪談? を調べることになってね。フィールドワーク、しなきゃいけないんだけど……」  出たよ。極度の恐がりのくせに、なぜかそういうのが好きなのだ。いい加減にしてほしい。 一般文芸的キャラ ・常識人引きこもり少年×未分化常識人女子大生  ひたすらシリアス?  時間が無くなったのでまた今度!