yb_001 :ユーリャ「男の子ってこういうのが好きなんだねぇ」 yb_002 :ユーリャ「そ〜なんだぁ。やっぱりヤマトも月に行きたいの?」 yb_002b :ユーリャ「仕方ないよぉ。燃料は貴重なんだし、あのロケットの燃料を暖房代に回せばいいのにって思ってる人少なくないよぉ」 yb_003 :ユーリャ「ヤマトだって寒がりのクセにぃ」 yb_004 :ユーリャ「うぷぷ。軟弱〜」 yb_005 :ユーリャ「ひ、ひど〜い。なんでそんなこと言うのよぉ〜」 yb_006 :ユーリャ「わたしそんなに興味ないからいいよ」 yb_007 :ユーリャ「どうしてぇ?」 yb_008 :ユーリャ「そういうものなの? でもどうせデートするならこんな場所じゃない方がよかったよ〜」 yb_009 :ユーリャ「ユリアじゃなくてユーリャって呼んでくれないとダメです」 yb_010 :ユーリャ「はい。発言を許します。どうぞ〜」 yb_011 :ユーリャ「デートですよぉ。それともパパとママが一緒の方がよかった?」 yb_012 :ユーリャ「あ、発射した」 yb_013 :ユーリャ「うわーきれい」 yb_014 :ユーリャ「プリヴェート」 yb_015 :ユーリャ「えへへ〜。家出してきちゃった」 yb_016 :ユーリャ「なによぅ。せっかく頼ってきたっていうのに〜。ヤマトは嬉しくないの?」 yb_017 :ユーリャ「うん」 yb_018 :ユーリャ「どうやってって、軌道エレベーターに乗って、ステーションから月行きの定期便を使って。おこずかいぜ〜んぶ無くなっちゃった」 yb_019 :ユーリャ「だから家出だっていったじゃない」 yb_020 :ユーリャ「さすがヤマト。それがヤマトダマシイってやつですか?」 yb_021 :ユーリャ「なるほど」 yb_022 :ユーリャ「あはは、それよりおなかすいたよ〜」 yb_023 :ユーリャ「大丈夫〜。おなかすいてるから、残飯でもおいしくいただけるよ〜」 yb_024 :ユーリャ「違うよ〜そういう意味で言ったんじゃないよ。ヤマトの怒りんぼう!」 yb_025 :ユーリャ「え? なんで?」 yb_026 :ユーリャ「そんなお金ないよ? ここに来る交通費で全財産無くなったっていったよ。聞いてなかった?」 yb_027 :ユーリャ「うん」 yb_028 :ユーリャ「なぁに?」 yb_029 :ユーリャ「そんなに臭くないよ?」 yb_030 :ユーリャ「???」 yb_031 :ユーリャ「うん」 yb_032 :ユーリャ「してるよ。そこは日本男児ど根性ってやつでガマンガマン」 yb_033 :ユーリャ「わたしを傷物にしたらお父さんに殺されるよ?」 yb_034 :ユーリャ「ふぁぁ、もうそんな時間なの〜」 yb_035 :ユーリャ「え? ああ、寝るときはこうだよ。スカートシワになっちゃうからねぇ」 yb_036 :ユーリャ「なんのこと?」 yb_037 :ユーリャ「……シーフードで」 yb_038 :ユーリャ「ね〜ヤマト。わたしが作ろうか?」 yb_039 :ユーリャ「ちがうよ〜ちゃんとした料理だよ。こんなのばっかり食べてたら病気になっちゃうよ」 yb_040 :ユーリャ「それじゃブレンドしてみよう!」 yb_041 :ユーリャ「カップ麺をだよ!」 yb_042 :ユーリャ「うむむ。それじゃ今度ちゃんとした食材買って作るよ」 yb_043 :ユーリャ「約束だよ」 yb_044 :ユーリャ「理由? 何の?」 yb_045 :ユーリャ「あ〜!」 yb_046 :ユーリャ「どうして?」 yb_047 :ユーリャ「うん」 yb_048 :ユーリャ「どうなるの?」 yb_049 :ユーリャ「それ困る〜」 yb_050 :ユーリャ「むー。仕方ないなぁ」 yb_051 :ユーリャ「そーだよ。だって人生の選択なんだよ」 yb_052 :ユーリャ「わかったよ」 yb_053 :ユーリャ「パンは好きだけどそれは食べる方で、作るのを仕事にしたくないの」 yb_054 :ユーリャ「あ、あるよ〜」 yb_055 :ユーリャ「な、なれなかったら恥ずかしいからいいよ〜」 yb_056 :ユーリャ「言っていいの?」 yb_057 :ユーリャ「なんで偉そうなの〜」 yb_058 :ユーリャ「わかったよ。あのね。わたしヤマトのこと大好きだから、ずっと一緒にいたかったの」 yb_059 :ユーリャ「うそだよ〜」 yb_060 :ユーリャ「ごめんごめん。本当はね。わたしも月で働きたいんだよ」 yb_061 :ユーリャ「うん。お父さんはオマエはパン屋になるのが一番だって」 yb_062 :ユーリャ「お母さんは放射能アレルギーで宇宙とか絶対ダメ! 絶対って人だから」 yb_063 :ユーリャ「うん。絶対に無理だね。ヤマトも寂しいでしょう?」 yb_064 :ユーリャ「二度と会えないよ」 yb_065 :ユーリャ「だから帰ったらもう二度と月にはこれないんだって」 yb_066 :ユーリャ「うん。それはわかるけど」 yb_067 :ユーリャ「ん? 何処に行くの?」 yb_068 :ユーリャ「ヤマト!!」 yb_069 :ユーリャ「大好き!」 yb_070 :ユーリャ「おかえリヤマト〜。そんなに興奮してどうしたの?」 yb_071 :ユーリャ「ふぅん。でもわたし、むずかしい事はわかんないよ」 yb_072 :ユーリャ「聞くのはいいけど〜。ご飯食べてからじゃダメなの?」 yb_073 :ユーリャ「んもう。ヤマトはお行儀悪いなぁ」 yb_074 :ユーリャ「すごいのねぇ」 yb_075 :ユーリャ「でもヤマトには荷が重いと思うなぁ。教授に協力してもらったらどうなの?」 yb_076 :ユーリャ「いいじゃないそれくらい」 yb_077 :ユーリャ「お金だけが幸せじゃないと思うんだけどなぁ」 yb_078 :ユーリャ「ヤマトはいまの生活に不満なの?」 yb_079 :ユーリャ「わたしは貧乏でも平気だよ。だってヤマトと一緒に居られるんだよ」 yb_080 :ユーリャ「そうじゃないよ〜。貧乏でもヤマトと一緒なら幸せってことだよ」 yb_081 :ユーリャ「ヤマトの意地っ張り〜」 yb_082 :ユーリャ「おかえリヤマト。ニュース見たよ。おめでとう」 yb_083 :ユーリャ「わたしは別に苦労してないよ。パン屋さんの仕事は楽しいんだよ」 yb_084 :ユーリャ「もう行っちゃうの?」 yb_085 :ユーリャ「ヤマトに相談したいことがあったんだけどなぁ」 yb_086 :ユーリャ「おかえりなさい」 yb_087 :ユーリャ「安泰ってどういうこと?」 yb_088 :ユーリャ「よかったね」 yb_089 :ユーリャ「なによ」 yb_090 :ユーリャ「え?」 yb_091 :ユーリャ「あの……」 yb_092 :ユーリャ「ちょ、ちょっと待って。ストップ。 yb_092b :もういいから。するから。結婚するから気持ち悪い事するのやめてよ〜」 yb_093 :ユーリャ「どうしたのヤマト?」 yb_094 :ユーリャ「何が?」 yb_095 :ユーリャ「婚約指輪も無い。泣き落としてのプロポーズなんて聞いたこと無いよ」 yb_096 :ユーリャ「うん。許してあげる。なんかほっとした」 yb_097 :ユーリャ「最近のヤマト。わたしとはなんか違う世界に居る人みたいだったから……」 yb_098 :ユーリャ「ヤマトってさ、追いかけても追いかけても、ず〜〜〜っと先を行くから、わたし置いてゆかれるかもって怖かったんだよ」 yb_099 :ユーリャ「そんなのっ! yb_099b : わたしに誰が相応しいかなんて、わたしが決めるからい〜の」 yb_100 :ユーリャ「いいよ。結婚しよう!」 yb_101 :ユーリャ「やだよ〜だ。ヤマトは一生あの変なプロポーズでわたしと結婚したんだって孫の代まで伝えるの。だからやり直しは認めないよ〜だ」 yb_102 :ユーリャ「いいよ。嫌だったら月まで家出なんかしないよ。それくらいもわからないほどヤマトは鈍いの?」 yb_103 :ユーリャ「ヘタレ」 yb_104 :ユーリャ「えヘヘ」 yb_105 :ユーリャ「相談?」 yb_106 :ユーリャ「なによそれ。わたし死にそうな顔なんてしてないよ〜」 yb_107 :ユーリャ「そう思ったんならちゃんとケアしなさいよね。あの頃はちよっとナーバスになってたんだから」 yb_108 :ユーリャ「ん〜もういいの。解決したから」 yb_109 :ユーリャ「どういうこと?」 yb_110 :ユーリャ「ないよ。いや、ある!」 yb_111 :ユーリャ「わたし、土下座プロポーズして、婚約指輪を落としてしまうようなお間抜けな人と結婚します」 yb_112 :ユーリャ「もちろん言うよ〜。喧嘩したにこの事を話せば一発でヤマトを黙らせられると思うの」 yb_113 :ユーリャ「そう思うならちゃんと探してきて」 yb_114 :ユーリャ「ちゃんと探してからだよ。研究室の中とかロッカーとか机とか全部探して無かったら、その時はお値段3倍で手を打っわ」 yb_115 :ユーリャ「お金持ちになるんでしょ?」 yb_116 :ユーリャ「冗談だよ。ヤマトが選んで買ってくれたものなら、月の石だってわたしは構わないよ」 yb_117 :ユーリャ「ど〜して?」 yb_118 :ユーリャ「う、うんわかった。ヤマト、かお真っ赤だよ」 yb_119 :ユーリャ「そ、そう?」 yb_120 :ユーリャ「そうだね。ねえヤマト」 yb_121 :ユーリャ「明日なんだけど。わたしも見学に行っていいかな?」 yb_122 :ユーリャ「明日はちょうど仕事お休みだし、一度くらいヤマトがやってる仕事を見ておきたいから。 yb_122b :その、科学者の妻になるんだから……」 yb_123 :ユーリャ「うん」 yb_124 :ユーリャ「わたし本当に入ってよかったの?」 yb_125 :ユーリャ「確かにそうだけど〜。その言い方はちょっとひどくない?」 yb_126 :ユーリャ「別に〜。気分を害しただけだよ」 yb_127 :ユーリャ「新しく開発したパンを試食してくれたら許してあげる」 yb_128 :ユーリャ「そうよ。わたしが考えて作ったんだよ〜。なにもヤマトだけが発明家じゃないんだからね」 yb_129 :ユーリャ「この話、ヤマトにしたよ。でもちゃんと聞いてくれないし〜」 yb_130 :ユーリャ「うん。と〜〜ってもおいし〜んだから。腰を抜かさないようにね」 yb_131 :ユーリャ「ところでこの実験ってなにをするの?」 yb_132 :ユーリャ「だって〜プロポーズのことがあったから、それ以外のことは全部忘れちゃったよ」 yb_133 :ユーリャ「ブ、ブラックホールって、あのなんでも吸い込んじゃうアレ?」 yb_134 :ユーリャ「さっぱりわからない」 yb_135 :ユーリャ「思ってたのより地味なのね」 yb_136 :ユーリャ「あ、もうすぐみたいよ」 yb_137 :ユーリャ「あはは。そういうこともあったね〜」 yb_138 :ユーリャ「どこへ行くの?」 yb_139 :ユーリャ「ヤマト待ってよ!」 yb_140 :ユーリャ「ヤマト!」 yb_141 :ユーリャ「あぶないんでしょ? 逃げようよ〜」 yb_142 :ユーリャ「ひとりで逃げるのはいやだよ」 yb_143 :ユーリャ「ヤマトはどうするの?」 yb_144 :ユーリャ「電源って?」 yb_145 :ユーリャ「そうだね。わたしでもできそう」 yb_146 :ユーリャ「うぐぐぅ、身体が重たぁ〜い」 yb_147 :ユーリャ「なんかね、無理っぽい。それより先に進んだ方がよさそう」 yb_148 :ユーリャ「電源落とせば元に戻るんでしょ?」 yb_149 :ユーリャ「そうなの?」 yb_150 :ユーリャ「でも押さないともっとまずいんだよね」 yb_151 :ユーリャ「夫の責任は妻の責任でしょ? だから押すね」 yb_152 :ユーリャ「わたしは貧乏でも平気だよ。だってヤマトと一緒に居られるんだよ」 yb_153 :ユーリャ「ここは……あれ? yb_153b : わたし確かボタンを押して、それから」 yb_154 :ユーリャ「えっと、貴方は……。 yb_154b :ええっ! ひょっとしてヤマトなの?」 yb_155 :ユーリャ「ご、50年?」 yb_156 :ユーリャ「ど、どうぞ」 yb_157 :ユーリャ「なるほど〜。理解しました!」 yb_158 :ユーリャ「ど〜して謝るのよ。助けてくれたんでしょう? こっちがお礼を言わなきゃ」 yb_159 :ユーリャ「ねえヤマト。それ本気で言ってるの?」 yb_160 :ユーリャ「違うでしょう。わたしはさ。確かについさっきまで実験してて、なんか事故に巻き込まれた〜って記憶しかないのよ?」 yb_161 :ユーリャ「でもヤマトは違うでしょ! yb_161b : ヤマトは……50年待ったんでしょう。わたしを助けるために50年犠牲にしちゃったんでしょう!」 yb_162 :ユーリャ「ならそれでいいわよ。とにかく、50年ぶりに恋人に再会というか触れ合えることができるんだよ」 yb_163 :ユーリャ「ハグとか、キスとか、そういうの、しなくていいの?」 yb_164 :ユーリャ「関係ないよ。それともなに? 50年の間に浮気しちゃったの? そのドアに向こうには新しい妻がいて、子供がいて孫までいちゃったりするの?」 yb_165 :ユーリャ「だったら遠慮しないでよ」 yb_166 :ユーリャ「もちろんだよ」 yb_167 :ユーリャ「これは?」 yb_168 :ユーリャ「嬉しい! はめてみてもいい?」 yb_169 :ユーリャ「うふふどう? 似合う?」 yb_170 :ユーリャ「もうヤマト。言い方がおじいちゃんみたい」 yb_171 :ユーリャ「そんなんじゃ〜いいパパにはなれないよ!」 yb_172 :ユーリャ「えっ?」 yb_173 :ユーリャ「ちちち、違うよ〜。おなかの赤ちゃんのことだよ〜」 yb_174 :ユーリャ「えへへ。前に相談したいことがあるっていったじゃな〜い」 yb_175 :ユーリャ「ぜんぜん違うよ〜」 yb_176 :ユーリャ「ヤマトの子供を妊娠しちゃったから相談しようと思ってたんだけど〜。そのことを話す前にプロポーズしてくれたでしょう?」 yb_177 :ユーリャ「そうしたらもう不安はなくなったから、相談するよりサプライズにしようって思ったの」 yb_178 :ユーリャ「実験が終わったら言うつもりだったんだけど……」 yb_179 :ユーリャ「どどど、どうしたのヤマト。泣いてるの?」 yb_180 :ユーリャ「泣かないでよヤマト」 yb_181 :ユーリャ「わかんない。わかんないけど悲しくて嬉しくて、色んな感情がごっちゃになってるんだよ」 yb_182 :ユーリャ「ねえヤマト」 yb_183 :ユーリャ「まだ歯は大丈夫?」 yb_184 :ユーリャ「あはは、覚えていてくれたんだ」 yb_185 :ユーリャ「でもパン屋さんって潰れてないかな?」 yb_186 :ユーリャ「ほ、ほんとに? どうしてそんなことできるの?」 yb_187 :ユーリャ「だから言ったじゃない」 yb_188 :ユーリャ「う〜〜ん。わたしにとっては昨日の出来事だから本当はダメなんだけど、ヤマトの頑張りに免じて言っていいよ」 yb_189 :ユーリャ「はい……。よろこんで」